100年シリーズの1冊目。ちなみに
2冊目「LABYRINTH IN ARM OF MORPHEUS ‐迷宮百年の睡魔」
3冊目「LADY SCARLET EYES AND HER DELIQUESCENCE ‐赤目姫の潮解」
時代は2013年。外界から切り離された謎の城砦都市「ルナティック・シティ」に
主人公のミチルと彼の相棒、ウォーカロンのロイディが迷い込むお話。
世界は完全に未来化しているが、その都市内だけでは100年前と同じ暮らしがされている。
人口約300人。ここでは人は死なないとゆう。なぜ死なないのか。
その答えは宮殿の中枢にあった。地下に作られた墓地。
そこには人口の約半数が眠っている。しかし彼らは死んでいない。
生と死。森博嗣の得意なテーマですね。
- Review -
森先生の考える未来がとてもおもしろい。特にアイテム。
きっと普段の生活の中でこうゆう便利さに憧れてるんだろうなぁと感じます。
例えばゴーグル。これを使えば感覚的に様々な情報を得られる。ネットワークで検索するだけではなく、スコープのように遠くのものを見ることもできるし、サーモカメラのように空気中の温度の流れを見ることもできる。イヤホンマイクが搭載されているので、距離に関係なく相棒のロイディと会話することができる。また、拳銃を操作することもできる。自ら引き金を引かなくても、登録した人物の指定した部位に正確に弾を撃ち込める。
色んなお話がこれでまた繋がります。主に「すべてがFになる」「四季 冬」
「ミチル」と出てきた時点で四季博士となんらかの関係があるのではないかと安易に想像できました。しかし最終的にミチル(の外見)が女性であるということと、「クジ・アキラ」という名前が出てきた時に納得。同時に久慈博士が連想され、四季シリーズ冬での、四季と久慈の会話を思い出すことができます。
- the Characters -
【 サエバ・ミチル 】
なんでサエバなんだろう。シティハンターを連想、、
ミチルの年表を作るのが一番わかりやすいですね。
1979 四季と新藤の間に娘として生まれる
1994 四季によって殺害され、腕を冷凍保存される 『すべてがFになる』2089 久慈博士により腕の細胞から人間として生まれる(性別は男性)
2108 マノによって殺害されるがアキラの身体に脳を移植され蘇る『四季 冬』
四季と久慈氏が再会。ミチルの全てを四季に打ち明ける
2113 マノを殺し、その後サラに殺される『女王の百年密室』
→ロイディに研究所まで運ばれる?
ミチルについてはとっても複雑。
サエバ・ミチルとして生まれ変わってからは、脳はロイディの中に置かれ、
電磁波で体と通信することによって体をコントロールしている。
ミチルの体(見た目はアキラ)の頭部には受信機が埋め込まれている。
よって完全に体は器だけということ。そこに意思はない。
しかし、ロイディはロイディとして行動する。彼はウォーカロンです。
【 マイカ・ジュク 】
物語の序盤でミチルがジュクから「何故、何故?それを言うのが人間」と言われますが、これは四季の言葉。四季が"すべF"で同じことを言っている。また、「私を判定する以前に、私を好きになることだ」これと同じことをクロウ・スホが言っています。(ミチルの部屋に来た時P254)よって、物語が後半になるに連れてジュクが王室に関係のある人物だと気がつきました。
最終的に分かることですが、ジュクはジュラ王子の父親であり彼を殺害した犯人。
また、ルナティック・シティを作った者の一人。この街での神。
人々は神を見ることも口にすることも許されないと教育されているため、ジュクを見ても「見ていない」と処理される。ジュクはこれを利用して王子を殺した。
マイカ・ジュクは100年前は有名なミュージシャンで世界一と言われる資産家だった。
(Michael Jacksonですか、、?) そして相方も世界一の資産家、BG。
彼の富は電子信号の集積によって築かれた。とあります。デボウは彼の娘です。
コンピューターが世界中に普及した時代とありますので、、
Bill Gatesですか、、?わお。森先生の遊び心が素敵です。
【 デボウ・スホ 】
四季と血縁関係があるのでしょうか。外見描写は四季に近いものを感じました。
ミチルがデボウに髪を触られた時に、「懐かしい」と感じています。
「ずっと以前にこんな奇妙な感覚をもったことがある」と。四季はミチルの母です。
といっても、ミチルは冷凍保存された四季の娘の腕の細胞を培養して作られた体ですが、、。
それに、一度マノに殺されて、久慈博士によってアキラの身体を器にして蘇っています。
ウォーカロンではないものの、かなり人工的に作られた人間です。
意識は器に、細胞に、残るのでしょうか。。
ミチル自身、「死ぬとその者の意識は蘇らない」と言っていました。
しかしミチルはデボウに懐かしいという感覚を抱いたのです。
因みにデボウが52歳なのに20代の容姿なのは冷凍睡眠しているから、、
【 マノ・キョーヤ 】
日本人。21人の人間を無差別に殺し5年前に行方不明に。
ミチルとアキラも彼によって殺された。
マノが逃亡に使った小型機のシステムにジュクが侵入し、ルナティック・シティに導いた。
自らが創造した完璧な平和システムの中に狂気(ジュク曰くウイルス)を混入させる
というジュクの実験に使用された。
日本で久慈氏が四季に依頼した連続殺人事件の犯人として断定されていたし、逃亡も
予期されていたが、四季は警察に届けなかった。その理由について『四季 冬』で
「ミチルがマノに復讐する自由を尊重してやりたかったから」と話している。
結局マノは、ミチルの復讐心によって殺される。
森先生の作り出すキャラクターの中でここまで感情的で衝動的な人物って珍しい気がしました。
- Quotation -
P352
襲われた者は、ただ怯えるだけ。それが自然の摂理です。人間は、雷に襲われ、雷に怯える。嵐に襲われ、嵐に怯える。神に襲われ、神に怯える。さて、私たちは、雷に復讐しましたか?嵐に復讐しましたか?神に復讐しましたか?いいえ、私たちが選んだ道とは、怯え、隷属し、崇め奉ることなのです。(中略)どうして?人は人にだけ、何故、復讐をするの?
P367
決して悲観しているわけじゃない。生きていることは、ときどき楽しい。毎日、少しずつ面白いことに出会える。僕はよく笑う。ロイディと話をするのも楽しい。新しいことを知るのも、悪くない。最悪でなければ、特に素敵じゃなくても良い、という意味だ。
P393
ロイディにとっては、今の天気も、未来の天気も、ほとんど同じ確かさなのだ。人間だけが、今、自分が触れているもの、見ているもの、聞いているものを現実だと信じる。そして、それが揺ぎない絶対の存在だと思い込む。その思い込みのために、過去を歪め、未来を見誤る。過去を恐れたり、未来に怯える。すべては認識の誤差が招く幻だ。
P544
人の心はプログラムのように間単には書き換わらないものだ。乗り越えるには高過ぎるし、くぐり抜けるには低過ぎる
時間があれば追記します*
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